NO,1

カリフォルニア

世界最大の樹が倒れたとき


Lグランビルジャイアントは1991年の暴風雨でその一生を終えた
 巨樹を訪ね歩いていると、感動することも多いのだが、倒れた樹で感動したことがある。それはカリフォルニアのレッドウッドの巨樹の森だ。樹の名前は「ダイアビルジャイアント」という。
 僕たちがこの公園に着いたときは、もうすっかり日も傾きかけたころだった。少し暗くなってきたことを気にしながら、足早に森の中を進むとそこだけぽっかりと明るくなっている空間を見ることが出来た。そして、そこには黒々とした巨木が横たわっていたのだった。倒れた高さは僕たちの背の高さよりもはるかに高く、長さも端から端までは見渡すことが出来ない。

L 盛にぽっかり空いた空洞をギャップという。
 そこから差し込む光を多くの木々は待ち望ん   でいた。     

 

 そこだけ明るくなっていたのは、この巨樹が周りの木々を軒並みなぎ倒しながら倒れたため、そこだけぽっかり森の中に穴が開いたように空がみえるからだ。今でも、その時の傷跡が周りの木々に残っていて、倒れたときのすさまじさを十分感じさせてくれる。
 この樹は1991年の暴風雨の時に倒れたのだが、その時の大音響が聞えるようなきがしてならない。
 「ダイアビルジャイアント」自身も、その重さで上部は砕け散っている。
 樹齢は1600年だったというが、偉大なものの死が僕には強く印象づけられた。



L根は以外に浅く、不思議なぐらいだ。

 ふと見ればこの樹の回りには、シダなどの日陰の植物が生い茂っていた。そして、その中に日が当たることによって初めて芽吹いたレッドウッドの幼木が勢いよく伸び始めているのを見ることが出来た。
 いつかこの巨人も静かに土に帰っていくことだろう。そして、いつの日か新たなる「ダイアビルジャイアント」が、この地にそびえ立つに違いない。
 現在、ナンバーワンの「シャーマン将軍の樹」よりもこの巨人に感動したのは、生きていくことの素晴らしさと、土に帰っていく自然な姿に、僕たちは感動したからだ。森の営みの自然さに心が震えたからだ。
 同行していたライターのKさんは涙が止まらなかった。

 

L 倒れた木に登るとまるで電車の屋根
 に立っているようだった。

 

 

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