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カリフォルニァ

宝石になった巨木たち



L 地上に現れた2億年前の巨木
 乾ききった草原を縫うように作られているトレイルを歩きながら、僕は2憶年という時間の長さの証を何処かに探していた。きっと何か残っているに違いない。
 どこから見ても巨木が横たわっているところにしか見えないのに、実はすべて石だという、まるで魔法使いに魔法をかけられてしまったような巨木たちを眺めながら、時間を証明するなにかを探していた。この巨木だけを見ていてはそんなとてつもない時間などはまるで想像できないのだ。


 その昔ここは宝石などを盗る男達が,ダイナマイトを仕掛けてはこの巨石たちを吹き飛ばし、その破片から宝石を探すといったような,日々爆発音が跡切れることのない場所だった。そんな男達はもちろん時間の長さなど、考えるはずもなかったろう。

L Petrified Woodの崩れた丘

 2億5千年前の巨木が宝石となって蘇ったという、そんな樹の第二の人生がある。火山の爆発により降り積もった火山灰が樹を被い、そして木の中に入っていった成分によってクォーツやマンガンなどの宝石に変わっていったという。 
 ペトリファイド・フォレストとはそんなとてつもない時間の流れが、突然現代に現れたところなのだ。


 そもそも、樹の第2の人生について興味を持ったのは、法隆寺棟梁 
故・西岡常一氏を取材した際「千年の巨木が無ければ、千年持つ塔を建てることはできない」と彼は言った。千年の巨木は切って千年目に切ったときの強度にもどるという。今でも真っ黒になった千年前の巨木にカンナをかけるとプゥーンと木の香りが香ってくる。樹は千年経っても生きているというのだ。そんな樹の第二の人生にひどく感動したのだ。
 しかし、この石かした巨木たちは生きているわけはなく、触ってもたたいてもただ荒涼としたこの大地にただ横たわっているだけだ。
 人は生きている間にとてつもない時間の流れの中に、一瞬生きいているだけだという、そんな感覚を味わうことはあまりない。
 しかし、大いなる時間をくぐり抜けてきた物に出会うとき、ふっとそんな事実に気がつくのかもしれない。



 L どこから見ても樹を輪切りにしたようにしか見えない。

L アップで見るといろいろな鉱物が含まれていることが分かる



ナショナルパークの入り口
砂漠には刺すような光が差し込む

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