NO,1

ジンバブエ〜バオバブ


何で巨木を巡る旅をしているのか、ふと分からなくなることがある。単に最初は好きなだけだったはずなのに、海外でつらい目に合ったり普段の生活を犠牲にしてまで出かけていく時など、なんで旅をするのだろう、なんでこんなことをしているんだろうとと考えてしまう。行く先の情報がほとんどないまま、アフリカまでも行ってしまうとなるとほんとに自分でもなんのためにやっているのか分からなくなる。
ましてや今回ときたらジンバブエで「巨大なバオバブを見た」と言う人がいて、たったそれだけの情報で行くことを決めてしまったのだ。現地で大きな木を見れる保証すら無いままの2週間の旅だった。
アフリカの大地はほんとに素晴らしい。そこに息づく動物や木々。そして人々は僕たちが経験したことの無いリズムで生きている。


 このバオバブハは幹周りが34メートルもあった。


アフリカというとすぐにライオンがシマウマをアタックするなど、テレビでおなじみの弱肉強食の世界を常に見せつけられるように思うが、実際はそんなにしょっちゅうハンティングを見れるものでもなく、また、場所にもよるが動物が何処にでもいると言うことでもない。



何回目かのサファリクルーズの途中ガイドのジョセフが車を止めて、僕たちに冷えたジュースをサービスしてくれたときのことだ。日差しは強く、風もあまりないためかなり暑いのだが、それがかえって木陰での休息を心地よいものにした。しばらくの間、そこで休息していたのだが、ほんとに静かでジョセフのほおをつたって落ちる汗ばかりが目についていた。まるで半径何百キロも何もいないのではないかと思われるほどだ。


その時、突然。どどどど・・と、地響きとともに動物の気配がしたのだが、周りがブッシュなので何がくるのか全く分からない。レジョンは慌てず静かにケースからライフルを取りだした。それは20頭ぐらいの象のファミリーだった。ものの10mぐらい前を小走りに走り抜ける象。中には子象もいて親に遅れまいと、一生懸命ついて行っている。あたりは騒然としてしまった。僕たちも、象にぶつかっては大変なので緊張し、車の中に急いで逃げ込んだ。レジョンはいつでも威嚇できる体制でライフルを構えたままだ。


それはほんのわずかな瞬間だったが、あまりにも強烈な印象だった。そして、その大騒動が終わるとまるで何事もなかったかのように、サファリのブッシュはいつもの暑い一日に戻っていた。
生きてる証。それは動きと制止だ。まのあたりにその空間をかいま見たとき僕は旅の意味を噛みしめた気がした。
サファリにそびえ立つ巨木バオバブ。それは命の秘密を知っているものに違いない。


〈世界編トップページへ〉 〈HOME PAGE MENU〉