黄金水松(こがねみずまつ)

種類:イチイ

推定樹齢3000年
幹周り6.2メートル
市文化財


場所:北海道芦別市黄金町764
  (黄金水松公園内)


これはいろんな人も言っているんだけどね、巨木を見に行くとき、例え木の近くまで車で行けるところでも、少し歩いて見に行ったほうがいいと思うんだ。木自体の意味よりも本当はそのことの方がかえって大切に思えることもあるぐらいだよ。「赤い鳥探しに」っていうところかなあ。縄文杉だって車で横まで行けたら、あんなにまで騒がれなかったと思うよ。
この木を見に行く時に北海道の木なんだから、どうしても真冬に見たいと思って2月に行ったんだけど、本当に寒かった。この木は公園の中にあるんだけど、雪が60センチぐらい積もっていて、スノーシューなんてものは僕持ってないから、ずぶずぶ埋まりながら苦労して歩いたんだ。途中に子供のスキーの跡やウサギの足跡なんか見ながら、もう汗だくだく。だけども疲れて立ち止まると5分で寒くて震え上がるって言う感じかなあ。

疲れてたどり着くと、そのときは木についてあまり感じなかった。ぜえぜえいっているだけでね。でもちょうど汗がひいて寒さが身にしみてくるころに木が寒さの中で毅然と立っているのがわかってくる。本当に静かで誰もいなくて。なんか何千年も雪の中でこのまま生きてきたんじゃないかって思えるほどだよ。
2時間ぐらいいて手をかじかませながら写真を撮ってたんだ。
いつもということじゃないけど、やっぱり巨木は一瞬だけどそのすごさを見せつけることがある。
雪にすっぽり埋まりながらどうどうと立っている、それでいてどこか動いているような感じでこちらにむかってくる。 何千年もこうしていたかのように。
そこに「動きと制止」がある。うまく例えられないけど神さびているとでも言うのだろうか。
実は2年後の夏にもう一度ここを訪れたんだけど、2年前の記憶がうそのようで、こんなに穏やかな所でこんなに優しい樹だったのかと思えた。まるで別世界を歩いているようで、ちょうど大人になって子供のころ過ごした街をもう一度訪ねたときのように、ところどころ覚えている景色があるのに木のまわりの空気がまるでちがう。
不思議な懐かしさを感じたぐらいだよ。
巨木はその時々でその姿を変える。
神さびた姿も、普段の穏やかな姿も僕はとても好きだ。


 

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